デジタル大辞泉 「債券」の意味・読み・例文・類語
さい‐けん【債券】
[補説]債券は償還を待たずに市場で売買できるため、投資の対象となる。債券の市場価格は、金融情勢を反映した市場金利の変化に応じて変動し、一般に金利が下落する局面で上がり、金利が上昇する局面で下がる。逆の見方をすれば、債券を購入する投資家が多い局面では債券の市場価格が上がって金利が下落し、債券が売られる局面では債券の市場価格が下がって金利が上昇する。
国、地方公共団体、政府関係機関、企業等が不特定多数の投資家から資金を借りる際に発行する有価証券のこと。発行体により、国債、地方債、社債などに分類される。日本の個人向け国債のような例外を除き、投資家は転売し換金することが可能である。
債券の発行は、古くは中世のヨーロッパにさかのぼるといわれる。日本国政府による初の債券発行は、1870年(明治3)にロンドンで募集した外貨建公債で、国内での発行は1872年が最初である。国内初の社債は大阪鉄道会社によるもので、1890年であった。
債券を金利との関係で分類すれば、利付債と割引債に区分できる。利付債は、一定期間ごとに金利が発生する債券で、割引債は金利分を額面価額から割り引いて発行、つまり金利分を先取りする形になっている。新発債と既発債(あるいは新発債券と既発債券)という区分も重要である。発行体が新たに資金調達するために発行する債券を新発債といい、それを取引する市場を発行市場とよぶ。一方、すでに発行されている債券を既発債とよび、取引する市場を流通市場とよぶ。流通市場における債券の売買価格は、金利や満期までの残存期間との関係などで変化する。
債券の価格は、発行時の金利が償還まで固定される固定金利債の場合、市場の金利が上昇すれば低下し、金利が低下すれば上昇する反比例の関係にある。発行市場における新発債の金利が上昇した場合、流通市場における同一条件の既発債は発行時に約束された金利では相対的に不利になるため、価格が低下する。
[浅羽隆史 2018年8月21日]
『ブルース・タックマン著、四塚利樹・森田洋訳『債券分析の理論と実践』改訂版(2012・東洋経済新報社)』
公衆に対する起債によって生じた,多数の部分に分割された債務(債権)を表章する有価証券。投機証券である株券に対し,債券は確定利付の利殖証券である。狭義では,株式会社が社債について発行する社債券をいうが,広義では,発行主体のいかんを問わず用いられ,国債,地方債,金庫債,公社債,公団債などを含む。発行主体による分類のほか,担保の有無により,担保付社債と無担保社債,債券上の権利者の表示の有無により,記名債券と無記名債券(日本では,実際上すべて無記名債券である),募集地域の内外により,内債と外債(外貨表示の外債を外貨債という。ただし,円建外債は,外国,国際機関,外国企業が日本で発行する円建債をいう),利札の有無により,利付債と割引債(割引債・利付債),現実に債券が発行されているか否かにより,現物債(本券ともいう)と登録債,発行主体の性質により,金融債(金融機関が発行)と事業債(一般事業公社が発行),発行方法により,公募債(公募)と私募債(縁故債),償還期限の長短により,長期債,中期債,短期債,などに分類される。債券には,元本償還や利息支払の条件が記載されている(要式証券。商法306条2項,担保付社債信託法35条)。債券は,現実に発行されるのが原則であるが,債権者の請求によって登録されるときは,債券は発行されず,または回収される(商法306条1項,社債等登録法4,14条,国債ニ関スル法律2条,地方財政法5条の3-1項)。債券は,金銭の給付を目的とする有価証券(商法518,519条)であり,喪失したときは,公示催告,除権判決を経て再交付を請求することができ(商法518条,公示催告及ビ仲裁手続ニ関スル法律777条以下),また,無記名債券の譲渡は債券の交付によって行い,その流通には善意取得が認められる(商法519条,小切手法21条)。
→社債
執筆者:藤井 俊雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…証券取引所には立会場があって,そこで組織的な売買が行われているが,店頭市場には一定の集会場所はなく,証券会社間あるいは証券会社と顧客との相対(あいたい)で取引が行われている状態を,抽象的にとらえたものである。このような店頭市場は,債券と株式に分けられる。 債券は取引所での売買もあるが,その比率は数%であり,ほとんどが店頭市場で売買されている。…
※「債券」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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